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靴のお国柄
 実のところ日本における革靴の歴史は、さほど深くない。明治維新を迎え、異国に文明が舶来する以前は、もっぱら草履や下駄。すなわち植物を主たる素材に求めて、履き物をこしらえていたのである。そのころヨーロッパのかの地では、動物の皮革がもつ伸縮性や耐水性、耐摩耗性をすでに利用していた。日本人にとっての起源は「靴」という漢字にもかいま見られるではないか。

 同じ欧州にあって、しかし地域によって好まれる靴は異なっていた。英国では頑丈で重厚な靴が流行し、イタリアでは華奢な軽いものが好まれた。

 グッドイヤー・ウェルト製法と呼ぶ靴の縫い方は、底革を別仕立てにするもので、底革の取り替えが容易にできる特徴がある。英国では古くから用いられた質実剛健で伝統的な技術。一方イタリアでは、マッケイ製法というシンプル方法でな底革を縫い合わせる。用いるのは、ていねいにナメした上質な牛革。まさしく足にすいつくような極上の履き心地をもたらすのだ。

 職人が技術を凝らせて作った靴は価格も高い。高いが一度履いたら、これが病みつきになる。美味しいステーキの味を知ったら、またそれが食べたくなる。人間とは業の深い生き物だねえ。数日前から棚の上に値札を付けて陳列してあるゼニアの白い靴。店主が買ってしまっては元も子もないか、南無三。
| 洋服屋の洒落日記 | 12:10 | comments(2) | trackbacks(0) |
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