一桁の番号をつけられた台風が日本列島に接近するなど、記憶をたどっても、ここ数年の事でしかない。確かな理由は知る術もないが、昨今の地球温暖化に何かしら因果関係があるように思えてならない初夏の昼下がり。
洋服屋を営んでいながら十年前、二十年前を遡ると、季節毎の品揃えが大きく変わったことに気づく。異常気象といわれる近頃の四季の乱れは、もはや異常と感じなくなってしまうほど恒常的なことで、夏だから綿シャツとか、冬だからセーターなどの季節感は崩壊しているといって良い。くわえてエアコンや自動車の普及など生活環境の過度な向上は、人々から四季の感覚を消し去ってしまった。
自然現象と暮らしぶりの変化は、日本のファッションを大きく変えているのである。
夏は暑いので少しでも涼感を演出できるよう綿や麻のシャツが好まれ、やはり涼しげに見える色合いが街にあふれた。ところが昨今の価値基準は流行の色や形が優先されるもので、必ずしもそれが涼しげな着こなしとは限らないのだねえ。
ファッションを楽しむのは本来、季節を感じて快適に過ごすところから始まり、社会生活の中でTPOが培われるべき。「先に洋服ありき」ではないはずだ。タケノコを見てコートを脱ぎ、カボチャを食べて半袖シャツに袖を通す。そんな衣食住が楽しめたら、もしかすると地球温暖化に歯止めがかけられるかも知れない。